Music For Life presents 「きりん座へ贈る手紙」スペシャルインタビュー

「いまだに根本的なところで、“なんで私がピアノを弾かなきゃいけないの……?”っていうのがあるんです(笑)」(小谷)


──それにしてもお2人の歌はメロディーもですけれど、言葉の使われ方がとても素敵ですね。

●高井:いや、私はともかく小谷さんは本当にすごいです。私、『街灯の下で』という曲がすごく印象に残ってるんですけど。“眠る街にぽつりと咲く 街灯の下で”に感動したというか。花に喩えた“街灯が咲く”っていう表現がすごいなぁと思って。たしかに灯りがともると花が咲いてるみたいだなって、言われてはじめて気がついて。

●小谷:嬉しい。作った甲斐があります。でも高井さんの歌詞も、すごく世界がありますよね。

●高井:ありがとうございます。歌詞は、メロディーと同時に出てきた言葉から広げていくことが多いんです。で、語感がいいワード、伝えたいこと、漢字を含めて美しい日本語であること、それがパッと一致するのが自分のなかでのベストなんですけど。でも最近はわりと歌詞から書く曲も増えてきてました。

●小谷:私も歌詞とメロディーが同時のことが多いですけど、そういう人、周りにほとんどいないんです。高井さんがほぼ初めてかもしれない。「同時ってどういうこと?」って聞かれるくらい(笑)。

──またお2人の弾き語りは歌とピアノの兼ね合いが本当にすごくいいですね。ピアノと歌が対等な感じがします。

●小谷:そうですか? 私はピアノに挫折したので、根本的なところで、なんで私がピアノを弾かなきゃいけないんだろうっていうのがあって。デビューしたらバンドがいて、私は歌に集中できると思ってたのに、「あれっ? デビューしてもピアノ弾かなきゃいけないんだ……」っていう(笑)。

●高井:えぇ~~! そうなんですか?

●小谷:むしろ「弾いて」って言われちゃうし。今は、私がピアノを弾いて歌う良さもあるって、わかるようになりましたけど。でもやっぱり根っ子には「なぜ私が……」があって(笑)。「ピアノ、うまいですね」って言われても、「どこが?」って思うし。

●高井:ひぇ~~~~。でもピアノを重ねて録音したりもしてますよね。あれとか、すごく面白いと思ったんですけど。

●小谷:あ、ああいうことは楽しい。レコーディングになると、オタク的な楽しみになるんですよね。でもライブでは、自分よりうまいピアニストがいるんだから、その人と自分の歌が混ざり合ったら、すごいカッコいいだろうなっていうのがあって。でも結局、「それより弾き語りのほうがいいよ」って言われてしまうのも、わかってるんですけどね。だから私のピアノは、あくまでも自分の書いた楽曲をよくするために一生懸命弾いてるっていう感じなんです。伴奏っぽく弾いて、書いた曲がつまらなくなってしまうのが嫌だから、いろいろ試行錯誤してるだけで。もしかしたら、それでピアノに主張が出てるのかもしれないないですね。

●高井:意外です。まさか「なぜ私が……」とは思わなかったです。

●小谷:ホントはバンドとか弦カル(ストリングスによるカルテット)でやるのが好きで。自己主張が強い歌だから、ピアノだけだと歌がすごい前に出てしまう気がして。いっぱい楽器が鳴ってるほうが遠慮なく歌えるというか、どれだけ歌っても自分の歌がうるさく聴こえないというか。

──弾き語りベストアルバム『MONSTER』は、遠慮して歌ってるとは思えませんが。遠慮されていたのでしょうか(笑)。

●小谷:へっへへへへ。それね、スタッフと戦ったとこなんです。スタッフは歌を聴かせようとしてボーカルの音量を上げたがったんです。でも私は説教臭く聴こえるのは嫌だし、歌ばっかり前に出てるものも基本的に好きじゃないんで、ミックスの段階でボーカルをだいぶ下げたんです。

●高井:あの、音量というより、歌詞がものすごく入ってくる歌ですよね。音量が小さくても、魂が歌から強く伝わって来るというか。

●小谷:なるほどなるほど。

●高井:でも、ご自身では歌を抑えているわけですよね。それでもあんなに迫力があるから……。本当にすごいと思います。

●小谷:高井さんは、どうなんですか。ピアノと歌のバランス、みたいなことは。

●高井:今はどっちも同じくらい自分にとって大事なんですけど。最初はピアノがないと歌えなかったんです。ピアノに依存してしまっていて。少しずつ歌の部分も育ってきてるとは思うんですけど、むしろもうちょっとピアノから離れたほうがいいのかなって思うときがあるくらいですね。ライブとかでも、昔は本当に音数がすごい多かったし、めちゃくちゃ弾いてましたから。頼ってました、ピアノに。最近は歌で伝えたいと思うようになってきましたけど、でも楽しくなると弾いちゃうんですよね。

●小谷:そうか、楽しくなると弾いちゃうんですね。

●高井:そうですね。歌が二つあるみたいな感覚というか……。

●小谷:でも「ピアノに依存」なんていい言葉ですね。羨ましい。そこまで自分のピアノを頼りにしてないので。素敵だと思います。

●高井:頼りにしてるもの、ありますか。

●小谷:えっと、メンタル。う~ん……と思うことがあっても、「本番でなんとかなる、いける!」って思えるメンタルですね(笑)。

「こんな風に作ろうとしてる建物もあるけど、ここは古さが本物」(小谷)


──今回のライブでは一緒に何か演奏する予定もあるのですか。

●小谷:どうですか?

●高井:小谷さんさえよければ、ぜひ一緒にやりたいです。

●小谷:弾いていただいたりして(笑)。

●高井:やらせていただきます(笑)。また会場がすごく素敵なので。

●小谷:だいぶ前に一度、明日館でライブをしたことがあるんですけど。本当に雰囲気があるし、空気感が違いますよね。作りこんでない古めかしさというか。こんな風に作ろうとしてる建物もあるけど、ここは古さが本物(笑)。

●高井:ホントですね。やっぱりエネルギーが染み込んでるような場所は、歌ったり演奏したりしたときに気分がすごく違うので。でも今回は小谷さんとご一緒できることが何より楽しみです。


■開催日時
 
2018年 9月14日 (金)
 17:30 OPEN / 18:00 START
開催場所
 
自由学園 明日館 講堂
 東京都豊島区西池袋2-31-3
 ●自由学園 明日館 Webサイト
 ■チケット料金
 ADV ¥3,800- / DOOR ¥4,300-
 ※税込 ※ドリンク代別途必要
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