『ピテカントロプスになる日 Vol.4  ~歌手と詩人とロックンローラー~』Special Talk①
柴田聡子×柳原陽一郎

「歳とって“今どこ住んでるの?”“蒲郡”って言う自分を想像するとドキドキする(笑)」(柳原)


●柳原:新しいアルバムの『愛の休日』、いいですね。それでね、『大作戦』という曲なんだけど、どうして、途中でチアガールになるんですか?

●柴田:これはもうヤケのヤンパチの歌なんです。大人になると武器もないし自信もないのに、やんなきゃいけないときってあるじゃないですか。

●柳原:そこで開き直って何もやらない人もいるけどね。やるタイプなんですね、柴田さんは。

●柴田:そうなんです。で、そういうときって「成功する! 大丈夫、大丈夫!」みたいに言い聞かせるしかない状況だから。自分のなかに応援団を作るために。

●柳原:チアガールがいるんだ!

●柴田:だから「頑張れー! 頑張れ頑張れ!」って応援してるだけの歌なんですけど。自分頑張れソングっていうか。

●柳原:でもその前にさ、「行きたいところはないかと訊かれてアゼルバイジャン」ってあるんだけど、それも気になる。このアゼルバイジャンは? 出てきちゃったの?

●柴田:そうです。書いたのがリオ五輪のときだったんですけど、出場国を見てて「アゼルバイジャンの○○○○」って聞くたび、なんか、……へっ!?ってなっちゃうんですよね。

●柳原:もしかしてアゼルバイジャン!って言いたくなるんじゃない?

●柴田:そうなんです! アゼルバイジャン!って。

●柳原:そういう言葉の瞬間ってありますよね。はぁ!ってなる。

●柴田:あります、あります。

●柳原:僕ね、それ「蒲郡」なの。

●柴田:蒲郡! わかる~。ちょっと文字も想像つかないですよね。

●柳原:歳とって「今どこ住んでるの?」「蒲郡」って言う自分を想像するとドキドキする。口にするだけで幸せになる感じでしょ?

●柴田:そう。この言葉が国の名前として存在してる感じが、すごい不思議で好きなんですよ。

●柳原:あとね、『ゆべし先輩』、いい歌ですよね。

●柴田:ありがとうございます。嬉しい。もち肌の先輩の話なんですけどね。

●柳原:それとこれこれ、『リスが来た』。

●柴田:これは山本精一さんの歌詞なんです。リスの歌詞があるってメールで送られてきたんですけど、最後に「ダイエットしながら 太ってんじゃねー!!」って改行された1行があって。ビックリマークとかついてるし、これは歌詞なのか? わからないけど歌詞だろうって判断して入れたんですけど。

●柳原:そこ、ビックリした。

●柴田:私もビックリしました。だから、ちょっとこの変な感じに太刀打ちできる曲を頑張って作ろうと。

●柳原:太刀打ちしてるしてる。いい曲ですよ。

●柴田:変な曲がんばろーと思って。それだけを念頭に置いて作りました。

●柳原:僕、幼稚園の頃、牛が来る夢に1年間ずーっと苦しんだんですよ。牛が抱きつくんですわ、僕に。身動きが取れなくなる。

●柴田:あはははは、怖い。

●柳原:しかも牛がすごく怖い顔をしてるの、ギョロ目でね。だから何かが来る恐怖っていうのがすごくわかるんです。で、「リスが来る!」って書いてあったから。うわっ!でかいリス、来たかなって(笑)。で、最後の『愛の休日』がまとめっていうか、これでケリがつく感じですね。

●柴田:最高にアッパーになって終わろうみたいな。

●柳原:『愛の休日』っていうのは、愛がお休みの日ってことなんでしょ?

●柴田:そうです。

●柳原:愛に満ちあふれた休日じゃなくて。

●柴田:そうそう。

●柳原:そうなんだろうなって思うと、全部つじつまが合うの。

●柴田:私、休みがちなんで、愛を。

●柳原:なるほど、愛のストライキ的な。

●柴田:そうなんです。

「それ、歌にします? 共作で書きます? スターの孤独」(柴田)


●柳原陽一郎(以下、柳原):ところで 札幌出身だそうですが、僕、初めてスキーをやったのは札幌のテイネハイランドなんです。

●柴田聡子(以下、柴田):テイネハイランド! 中学校のスキー遠足で行きました。

●柳原:スキー遠足?

●柴田:冬の体育は全部スキーなので。1日かけてスキーに行って、それで体育の授業時間を全部消化するんです。

●柳原:スケートじゃないの?

●柴田:スケートじゃないんです。旭川のほうはスケートらしいですけど。

●柳原:ジャンプでもない。

●柴田:ジャンプでもない。ジャンプは限られた人がやるものっていうか。

●柳原:友達でジャンプをやってる人、いました?

●柴田:いたかな……。でもジャンプは選ばれし者って感じだから。

●柳原:やりたい人がやったりするわけじゃないの? こいつジャンプに向いてるなぁっていう人が選ばれるわけじゃないの?

●柴田:いや、もっとアスリートみたいな感じというか。それにジャンプって、なんかお金持ちしかできないぞ~みたいな感じじゃないですか?

●柳原:お金も必要?

●柴田:必要ですよ。あの坂を維持しなきゃならないし。

●柳原:あぁ~~~~。そうか、そうだよね。……今思ったけど、ジャンプって基礎練習をして、いつかあれを飛ばなきゃいけない日がくるわけじゃない? 70メートルとか90メートルの。やだよね~、介添えみたいなことも無理だし、何が起きても、誰も助けることはできないじゃない、飛んじゃったら。

●柴田:うんうん。いくらお前はできる!って言われても、あの坂を下るの、めちゃ怖いですよね。

●柳原:一緒に飛ぶ人、いないし。自分で暗示をかけるのかな。

●柴田:イメトレにイメトレを重ねるんですかね。飛ぶ前に、まずあの坂を下る訓練をしたいですよね。

●柳原:それやったら飛んじゃうでしょ(笑)。

●柴田:あ、そうですよね。

●柳原:シミュレーターみたいなもの、ないのかな。

●柴田:たしかに。……あっ! あるある!

●柳原:やっぱりあるんだ! ジャンプシミュレーター!

●柴田:ジャンプ場の近くにある博物館みたいなとこにありました。でも、プロ用なのかな……。

●柳原:観光用かもしれない?

●柴田:そうかもしれない。柳原さん、スポーツはお好きなんですか。

●柳原:どうだろ……。でもスポーツ選手の話すことを拝聴するのは好きですね。

●柴田:それ、私も大好き。『Number』とか読むのも大好きなんです。

●柳原:そういう話を読んだり聞いたりすると、全然レベルが違うのに、わかったつもりになるっていう。あと好きなのは、よくないと思うんだけど、その後の話。たいてい転落の話になるんだけど。

●柴田:あ~わかる~~~。

●柳原:あれだけ巨万富があっても、一人で遠征とかに出れば、そりゃ寂しくもなるわな、どこに行っても孤独ってのは癒されないんだなとか、いろいろ想像するのが好きですね。そういうの、お好きですか?

●柴田:好きというより、どうしても惹かれてしまうんですよね。

●柳原:アスリートとしては超人みたいな人が、実はとっても不器用で、まったく図太いところのない人だったりね。

●柴田:そう、繊細なのに、そうは見られていなかったり。そういうギャップに惹かれてしまう。

●柳原:アスリートに限らない、スターの孤独、ですよね。

●柴田:そういうことを思うと涙が出そうになってきちゃうんです。

●柳原:それ、歌にしますか。うまくいかなかったスターの孤独。

●柴田:えっ! 歌にします? 共作で書きます? スターの孤独。

●柳原:もちろん共作にしましょうよ。うまくいったら『ピテトロ4』でお披露目と。というか、ここで言っちゃったら、うまくいかなかった……は許されなくなりそうなんだけどね(笑)。


■出演:柳原陽一郎 / 柴田聡子 / 奇妙礼太郎
■開催日時
 2017年10月17日 (火)
 18:30 OPEN / 19:00 START
■開催場所
 duo MUSIC EXCHANGE

 東京都渋谷区道玄坂2-14-8 O-EASTビル1F
 ●duo MUSIC EXCHANGE Webサイト:http://www.duomusicexchange.com
■チケット料金
 前売り¥3,800(税込) / 当日¥4,300(税込)
 ※ドリンク代別途¥500-必要
■主催:Music For Life
■企画・制作:SWEETS DELI RECORDS / Music For Life
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